マイクロビームライン/ビーム自動集束システム
伯東株式会社 取扱製品
マイクロビームライン
製品名:MBⅡ- AQUA
MBⅡ- AQUAは静電加速器により加速されたイオンビームを1μm径程に自動集束し、高空間分解能なイオンビーム分析を自動で行うことが可能なシステムです。 従来マイクロビーム分析を行う際は、専門技術者による精密な設置作業に加え、運転毎にレンズ磁場の調整が必要でした。 レンズの磁場調整作業には非常に時間がかかり、貴重なマシンタイムを消費していましたが、独自開発したビーム自動集束システムにより、ビーム輸送から1時間以内でイオンビーム分析実験を行うことが可能となりました。 本システムは、RBSやPIXE等の基本的なイオンビーム分析用のデータ収集系も備えており、ビーム調整からデータ解析までトータルパッケージでの提案が可能です。
独自のビーム自動集束システム
ビームを集束するためには、四重極レンズに流す電流量を変化させることにより磁場強度を調整し、光学レンズでいう焦点距離を調節することが必要です。
ここで一般的に用いられるダブレット、トリプレットシステムにおいては、X集束とY集束のレンズがカップリングしているため、片方の軸を収束させるともう一方の軸が発散してしまい、2つのパラメータを調整する必要があります。
1μm径程度の集束を得るには磁場強度は10^-5T/m程度の精密さで合わせる必要があり、経験の少ない実験者の場合には、目的のビーム径まで収束させるのに数時間が必要でした。
本システムは、レンズ磁場調整の自動化を目指し、一般的なカメラで用いられているコントラスト法と位相差法に基づく自動集束システムであり、イオンビーム実験前のビーム調整時間を大幅に短縮しました。
ビーム自動集束システムは、Qレンズコントロールシステム、四重極レンズ、スキャンシステム、ビーム径測定システムとそれを統合するコントロールソフトウエアから構成されており、自動集束に必要なパラメータの計算だけでなく、焦点予測やビーム軌道の計算も可能です。
ビーム自動集束システム
自動収束システムにはコントラスト検出モードと位相差検出モードの2つのモードがあります。
コントラスト検出モードでは、金属メッシュをイオンビームで走査した際に放射される二次電子の収量曲線からビーム径を自動計算しています。
その情報を四重極レンズに流す電流量にフィードバックし、ビームサイズを比較しながら測定軸の磁場強度を変更(増減)することで、
最終的なビームの焦点が合う磁場を見つけるまで、自動で作業が繰り返されます。
自動集束
Qレンズコントロールシステム
四重極レンズに流す電流量を変化させると、レンズ内部の空間磁場強度が変化し光学レンズでいう焦点距離を調節することが出来ます。
Qレンズは、2台を同時にコントロールすることができ、エンコーダユニット(オプション)を用いた制御も可能です。
焦点位置の予測だけでなく「X集束ライン/Y集束ライン」の計算も可能となり、かつ手動での集束作業も容易となります。
また、試料位置を変更したときの磁場予測、加速粒子のエネルギーや質量を変更した場合の磁場予測も可能です。
Qレンズ制御用コントロールパネル
(X集束/Y集束)
ビーム軌道・スポットサイズ予測
エンコーダーユニット(オプション)
四重極レンズ
本ビームラインにはレンズ長:60mm、ボア半径:5mm、最大磁場強度:85T/mの精密四重極レンズを使用しています。多重極成分の混入は0.05%以下であり、サブミクロン径のビームを得ることができます。レンズは精密ステージにマウントされており、精密な調整が可能です。
■ダブレットシステム(標準モデル)
標準的なダブレットシステムで使用する場合、縮小率はX:1/10、Y:1/40となり、「4MeV He+」や「8.5MeV 28Ni4+」等のイオンに対して、1×1μm2(オブジェクトでのビーム径を10×40μm2としたとき)のビームを得ることができます。
重イオンについてはワーキングディスタンス(WD)を延ばすことでビームを集束させることができます。
WDを延ばした場合の縮小率はX:1/6、Y:1/20となり、「8.5MeV 64Cu4+」などの重イオンの集束も可能となります。
WDを延ばす作業は四重極レンズが精密ステージにマウントされているため、難しい作業ではありませんが、細かな調整が必要となります。
■トリプレットシステム(カスタムモデル)
トリプレットシステム化にはレンズの追加が必要となりますが、追加作業は非常に簡単に行うことができます。
トリプレット化を行った場合、縮小率はX:1/10、Y:1/20となり「8.5MeV 64Cu4+」などの重イオンでもより小さなビームを得ることが可能です。
また、重イオンの時はトリプレットとして使用し、軽イオンの時はダブレットとして使い分けることも可能です。
予めトリプレットシステム化をしておくことで、WDの変更・調整を必要最小限の工数で行うことが出来る為、非常に運用しやすい構成となっています。
四重極レンズ(トリプレットシステム)
ビームスキャンシステム
ビームスキャンシステムでは静電方式を採用しています。3MeVの陽子に対し、1㎜□の範囲でスキャンが可能です。
ビームスキャナー
コントロールソフトウェア
マイクロビームラインは真空ポンプやマイクロスリット、ダイバージェンススリット、Qレンズ、3軸ステージなどで構成されています。
自動集束システムではこれらの機構をソフトウェア上で全て制御することが可能です。
また、測定結果のログを記録する実験ノート機能も持ち合わせています。
(※”GioPIXEII”、”SIMNRA”汎用ソフトとの連携も可能)
システム構成
コントロールパネル
自動測定機能
本システムには自動測定機能があります。事前に保存したレシピに従い自動的に測定を行ったり、同じ試料の繰り返し測定などを自動で行うことが可能です。
【操作画面(例)】
自動測定設定画面
既存設備へ対応可能(カスタマイズ/アップグレード)
本マイクロビームラインおよびビーム自動集束システムは、加速器のメーカーを問わず既存設備と組み合わせて使用することや、既存のマイクロビームラインのアップグレードにも対応が出来ます。
日本国内では既にNational Electrostatics Corp(NEC)社の加速器と組み合わせての使用や、既存のマイクロビームシステムのアップグレードに使用されている実績がございます。
1μmのビーム径の場合、ビームラインの長さは約7m程度の設計となりますが、ご希望のビーム径や建屋の大きさ、スペースに合わせてのカスタム化も可能です。
マイクロビームライン
参考文献
本製品ページは、本システム開発者である東北大学 松山 成男 教授(Professor Shigeo Matsuyama Ph.D)のご協力のもと作成しております。
参考文献は以下の通りです。
- Nuclear Instruments and Methods in Physics Research sectionB
■Improvement and recent applications of the Tohoku microbeam system(NIMB 318 2014 32–36)
- ■Progress and application of the Tohoku microbeam system(NIMB 260 2007 55–64)
- ■Automation of multi-modal beam focusing of an MeV sub-microprobe for ion beam analysis(NIMB 496 2021 1–8)
- ■Current status of the Tohoku microbeam system at Tohoku University and other facilities – ScienceDirect
(NIMB 64909 2023 79-88) - ■Development of a focal guidance system for microbeam formation – ScienceDirect(NIMB 64943 2023 158-167)
APPLICATION
アプリケーション-
ミクロンCT
微小な試料に特化したミクロンの分解能を持つX線CTです。イオンマイクロビームとPIXE法による準単色のX線を組み合わせることで、高コントラスかつ約1µmの高空間分解能を実現可能です。
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マイクロPIXE分析
マイクロビームを使って試料を走査することで元素マップの取得が可能です。数µmの分解能で微量元素マップを取得できるので、エアロゾルなどの環境試料や細胞などの生体試料の分析に適しています。
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RBS分析
固体中に含まれる原子の組成、量、深さ方向分布を調べることが可能です。定量に用いる散乱断面積や試料中のエネルギーロスなどのデータの信頼性が高いため、標準試料を用いることなく深さ方向組成分析が可能です。