特殊用途に対応したMBEセル
RIBER(リベール)
特殊用途MBEセル
HT,MHTシリーズ、HATシリーズ、カーボンセルシリーズ
標準型クヌーセンセル(Kセル)とは異なる特殊用途向け分子線セルを幅広く提供しています。2000℃での動作が可能な高温セル、水素ガスを高温で熱分解する原子状水素セル、高純度のグラファイトフィラメントを昇華させるカーボンセルを紹介します。
SERIES LINEUP
シリーズラインナップ-
高温セル
HT,MHTリーズ
高温エフュージョンセルは、2000℃までの超高真空環境下でのクリーンな動作が可能です。通常は電子銃を使用して蒸発させる必要のある低蒸気圧の材料に簡単に使用できるように設計されています。
-
水素ガス熱クラッキングセル
HATシリーズ
水素ガス熱クラッキングセルは、費用対効果の高い原子状水素源です。この水素源は、高温のタングステンフィラメントで水素分子(H2)を高温で熱分解することにより、原子状水素のフラックスを生成します。
-
カーボンセル
カーボンセルシリーズ
カーボンのドーピングには、昇華型ドーピングセルを使用します。炭素のフラックスは、高純度のパイロリスティック・グラファイト・フィラメントを昇華させることで生成されます。
高温セル(HT,MHTシリーズ)
高温エフュージョンセル(高温MBEセル)は、2000℃までの超高真空環境下でのクリーンな動作を可能にします。このMBEセルは、通常は電子銃を使用して蒸発させる必要のある低蒸気圧の材料に簡単に使用できるように設計されています。
フィラメントは自立している為、ホットゾーンから絶縁物を取り除くことができ、動作中のアウトガスによるコンタミ汚染の問題も回避できます。セルのホットゾーンには、耐火性材料のみが使用されています。絶縁性セラミックの使用は、ソースの低温部に限定され、動作中のアウトガスを防ぎます。蒸発させる原料や目的の用途に応じて、耐火金属やセラミック製の数種類のるつぼやライナーを採用することができます。また、蒸着源の周囲に水冷パネルを設けたモデルや、シャッターを内蔵したモデルもあります。
適用蒸着材料
Fe、Co、Cr、Ni、Au、Ti、Pt、Zr、Vなどの高融点金属
特徴
・ 使用温度範囲:500℃~2000℃
・ 超高真空設計、クリーン、簡便操作
・ 低コストソリューション(対電子ビーム銃)
・ 豊富な種類のるつぼとライナー
・ あらゆるMBEシステムに簡便に取り付け可能
・ オプションのシャッター、水冷パネル
HTセル概要図
製品スペック表
特性 | HT12 | MHT 35 |
フィラメント | シングル | シングル |
ヒーティングフィラメント | W (絶縁体支持無し) | Ta |
るつぼ材料 | Ta,PG,W,PBN etc | Ta,PG,W,PBN etc |
るつぼ容量(最大容量) | 12cc | 35cc |
取付フランジ | CF40(2″ 3/4) | CF40(2″ 3/4) |
最高アウトガス温度 | 2000℃ | 1700℃ |
動作温度 | 700-1800℃ | 500-1500℃ |
最高温度 | 1900℃ | 1550℃ |
熱電対 | Cタイプ | Cタイプ |
消費電力 | <1000W | <600W |
オプション | 水冷/インテグレーテッドシャッター(CF63) | 水冷/インテグレーテッドシャッター(CF63) |
※モデルによっては、インテグレーテッド式のセルシャッターと水冷シールドが取り付け可能です。詳しくは伯東までご相談下さい。
水素ガス熱クラッキングセル(HATシリーズ)
水素ガス熱クラッキングセルは、費用対効果の高い原子状水素源です。この水素源は、高温のタングステンフィラメントで水素分子(H2)を高温で熱分解することにより、原子状水素のフラックスを生成します。原子状水素のフラックスは、基板表面の炭素や酸素ベースの汚染物質を、比較的低い温度で容易に蒸発する揮発性種に変換します。そのため、原子状水素源は、基板の低温洗浄や脱酸などに非常に有効です。また、原子状水素を用いることで、GaNのGa-rich depositionの成長速度が大幅に向上することが示されています。解離効率は、クラッカーゾーンでの水素圧力とフィラメント温度に強く影響します。原子状水素は、高純度のH2ガスの熱分解によって生成されます。動作温度は約2200℃。すべてのモデルには、フランジ温度を調節するための水冷システムが装備されています。
水素ガス熱クラッキングセルは、プラズマ源と同等の原子種を供給することはできないため、分解されなかった水素も成長室内に放出することになりますが、基板の洗浄や準備のために原子状水素を利用したり、特定の用途で成長雰囲気を変えて成長速度を向上させる用途に対しては、費用対効果の高い技術です。
※クラッキング効率
クラッキング効率は、四重極型質量分析計(Q-mass)を用いて、0.1sccmの水素流量でテストチャンバー内の水素分圧の減少を測定しました。測定結果は資料ダウンロードよりダウンロードください。
※電流/電圧に対応する温度
フィラメント温度は、J.A. Jones, Phys. Rev., 28 (1926)の校正データを用いた物理抵抗測定によって決定されています。なお,これらの値は,測定システムやフィラメント・ソースの経年変化によって若干異なる場合があります。
適用蒸着材料
H2
特徴
・ 熱クラッキングにより高純度な原子状水素を生成
・ GaAs、InP、CdTe基板プリクリーニング
・ 2次元エピタキシャル成長を促進(界面活性効果)
・ SiC表面の原子レベルでの平坦化
・ コストパフォーマンスの高い原子状水素源
水素ガス熱クラッキングセル概要図
製品スペック表
特性 | HAT |
フィラメント | シングルタングステン |
フィラメント設計 | 自立型 |
取付フランジ | CF35 |
熱電対 | Cタイプ |
消費電力 | 56W |
水冷 | 有 |
動作温度 | 2300℃ |
最高温度 | 2600℃ |
最高アウトガス温度 | 2800℃ |
ガス導入継手 | 1/4 VCR-F |
カーボンセル(カーボンセルシリーズ)
カーボンのドーピングには、昇華型ドーピングセルを使用します。カーボンのフラックスは、高純度のパイロリスティック・グラファイト(PG)フィラメントを昇華させることで生成されます。PGフィラメントは、高電流を直接流すことで加熱されます。フィラメントの周囲には同じPG素材を使用し、カーボンフラックスの高純度を保証しています。
通常の使用では、フィラメントは1700℃〜2100℃の範囲で加熱されます。フィラメントの熱質量が小さいため、ドーピングレベルを高速に変更することができます。フィラメントの放射エリアは、2インチや3インチの基板でも横方向の均一性に優れています。フィラメントの周囲には高純度のパイロリスティック・グラファイト(PG)が使用されており、アウトガスによるクロスコンタミネーションを防ぎます。ソースは、様々な真空システムに適合するようにカスタマイズすることができます。電源に印加される電流密度に耐えるように、フィードスルーは水冷されています。
適用蒸着材料
C
特徴
・ 固体ソースMBE装置との高い親和性
・ 優れた均一性と急峻なフラックス変化
・ 使用温度範囲:1700℃~2100°C
・ 加熱されたPGフィラメントでカーボンビーム強度を制御。
・ GaAs膜中の正孔濃度10^18~10^20 cm-3
・ PGフィラメントの容易な交換
・ 高速フラックス変化
カーボンセル概要図
製品スペック表
特性 | カーボンセル |
フィラメント | シングル 高純度カーボン(PG) |
容量 | 800h @ 0.5Å/min //10E19cm-3 |
取付フランジ | CF40 |
水冷 | 有 |
水流 | 2-7 bar/0.3L/min |
熱電対 | Cタイプ |
動作温度 | 1900℃(~72A)-2100℃(~80A) |
最高アウトガス温度 | 2300℃(~100A) |
消費電力 | 1500W |
分子線エピタキシャル法の原理
分子線エピタキシャル法による分子線エピタキシー(MBE)は、エフュージョンセル(クヌーセンセル等)内のるつぼに入れた原料を加熱蒸発させ、基板上に到達させて結晶成長(エピタキシャル成長)を行う真空蒸着法の1つです。加熱蒸発の方法には抵抗加熱方式や電子ビーム照射方式などがあります。MBE は真空蒸着法の1つですが、MBEの特徴としては、チャンバ内を真空に引き,チャンバの周りを液体窒素で冷却することによってチャンバー圧力を高真空状態(~10-9torr 程度)に保ち蒸着を行うため、蒸発ガ ス分子の平均自由工程が長く、ガス分子はビーム状の分子線となって他の分子に衝突することなく基板表面に到達します。超高真空下にて成膜を行うため、残留ガスの影響を少なく抑える事ができ高品質の結晶膜が得られます。また膜厚の精密な制御も可能です。さらに RHEED(反射高速電子回折)等の結晶モニター等を用いて in-situ でモニターしながら、結晶成長条件へフィード バックすることが可能であり、このMBEの優れたフラックス制御性、界面の組成が原子レベルで急峻な組成を作製することができる為、化合物半導体デバイス向け結晶成長などに用いられます。
Item# | Description |
a | メインクライオパネル(シュラウド) |
b | セルデバイダー |
c | プラテンマニュピレーターおよびクライオパネル |
d | 液体窒素フィードスルー |
e | 分子線セル(蒸着源) |
製品メーカー案内
RIBER社(フランス)は、1964年に設立された分子線エピタキシャル成長装置(MBE装置)およびコンポーネント(MBEセル・蒸着源)を製造・販売する世界シェアNo.1のサプライヤーです。主にGaAsやInP、GaN等の化合物半導体材料の成膜用途として累計約800台の装置を世に送り出してきました。現在、世界の主要大学や公的研究機関、デバイスメーカー、エピファウンドリー各社がRIBER社のMBE装置を運用しており、データ通信、5G/6G、VCSELレーザー、フォトニクス、センサー、3Dセンシングなど様々な最先端分野の研究または生産ツールとして貢献しています。
日本国内では、伯東株式会社が総代理店として、同社製品の販売と保守サービスを提供しております。
APPLICATION
アプリケーション-
半導体レーザー
今日、半導体レーザーは、通信・レーザー切断・計測など様々なシーンで使用される重要なツールです。Riber社のMBEソリューションは、究極のスペクトル狭さと低欠陥密度を可能にし、レーザーの特性と信頼性を強化します。
-
赤外線センサー
赤外線センサーの多くは、MBEエピタキシャルウエハから作られています。昨今III-V族エピによる新世代の赤外線センサーが出現し、ガス検出や人感センサーなど幅広く応用されています。
-
ディスプレイ
マイクロLEDはMBEが重要な役割を持つ分野です。MBEはGaNにおける高In組成を容易に実現できるため、蛍光体を使わずに可視スペクトルをカバーすることができます。Riber社はMBE装置と蒸発源の豊富なポートフォリオにより、次世代ディスプレイ製造のソリューションを提供します。